2025年2月公開の映画『ファーストキス』で、リリー・フランキーさんが坂元裕二脚本×塚原あゆ子監督タッグに初参加!
なぜ天馬市郎役に抜擢されたのか、制作陣の裏話や現場でのユニークなエピソードを分かりやすくご紹介します。
「ファーストキス」でリリー・フランキーが演じる天馬市郎とは
主人公を支える”静かな包容力”を持つキャラクター
映画『ファーストキス』でリリー・フランキーさんが演じる天馬市郎は、カンナ(松たか子)の夫・駈(松村北斗)が通う大学の教授。
ただの恩師という枠を超えて、物語の中で精神的な支えとなる、とても大切なキャラクターなんです。
坂元裕二さんの脚本では、天馬市郎は何かを無理やり説得したり押し付けたりせず、ただ静かにそばにいて、主人公たちの決断や成長を“そっと”見守ってくれる存在として描かれています。
血縁や年齢をこえた家族のような温かさで、メインキャラクターたちをやわらかくつなぐ“潤滑油”みたいな役割が本当に印象的です。
塚原監督も「どこか適度な距離感で温もりを持ち、説教っぽくならないリアリティと優しさが同居する役」と表現されています。
人生の修復や気づきがテーマのこの作品には、まさに欠かせない存在だなと感じました。
坂元裕二×塚原あゆ子監督が語るキャスティング秘話
脚本執筆段階から「天馬市郎=リリー・フランキー」だった
びっくりしたのが、坂元裕二さんは脚本を書き始めたかなり早い段階から、天馬市郎役はリリー・フランキーさんしかいない!とイメージしていたこと。
ティーチインイベント(観客も自由に質問できるアットホームな質問コーナー)」でご本人が話していましたが、「言葉少なでも何かが伝わる人」「静かな包容力」という市郎像が、そのままリリーさんの佇まいに重なったから、思いきって直接オファーしたんだとか。
塚原監督も、坂元さんの深みある会話劇やリアルなキャラクター像を“力まずナチュラルに受け止めて表現できる”俳優として、リリーさんを高く評価していました。
「全部を説明しない台詞の重みや、間、行間の空気…そういう坂元作品の持ち味こそ、リリーさんなら自然体で表現できる」と監督も太鼓判。
まさに理想的なキャスティングだったんですね。
実は塚原監督自身も、坂元さんの脚本を“自分のバイブルみたい”と語るほど気合十分で現場に臨んだそうですが、リリーさんの起用だけは迷いがなかったそうです。
「圧をかけない存在感」「人生の支えであり、橋渡し役にもなれる余白や柔らかさ」を持つリリーさんなら、作品世界をよりふくらませてくれる――そんな確信が最初からあったというエピソード、素敵ですよね。
初タッグならではの新鮮な化学反応
『ファーストキス』は、坂元裕二さんの脚本と塚原あゆ子監督の初タッグ作品。
もともとはプロデューサーの山田兼司さんが「家族や夫婦を描く映画を坂元さんと作りたい」と声をかけたことから、この企画がスタートしたそうです。
坂元さんは「人生の修復ややり直し、日常のなかにある本当の幸せ」を描く物語をじっくりと考え、塚原監督も「何気ない日々の積み重ねや、喪失を経て気づく幸せ」というテーマを、丁寧な演出で表現することにこだわったとのこと。
そんな二人の新しい化学反応に、リリー・フランキーさんが加わったことで、この作品は一層深みとあたたかさが生まれています。
監督が明かす現場でのユニークな演出方法
あえて演技指導をしない?”何もしない”ことが最大の演技
ここからがすごく興味深い裏話なんですが、塚原監督はリリー・フランキーさんに、普段のドラマ現場とは真逆といえるほど“大胆なアプローチ”をしたそうです。
細かい演技指導は一切せず、「とにかく現場の空気や“間”を大切にしてほしいんです」とだけ伝え、あえて演出の注文は最小限に留めたんだとか。
監督が「そのままのリリーさんで、現場にただいてほしい」とお願いしたのを受けて、リリーさんも「演じる」というより「その場を大事にし、セリフじゃなくて雰囲気や言葉にできない“余韻”を伝える」ことを意識して現場に臨んだそうです。
実際の撮影でも、大事な場面で一言二言しか発しないことも多く、ただ静かに主人公たちのそばに佇む姿が印象的。
役者として“何もしない”ことこそが演出の一部になっていた、という本当にユニークな役作りでした。
こうした方法は、従来のドラマ制作とは全然ちがう、“新しい挑戦”だったんじゃないかなと思います。
距離感と余白にこだわった繊細な演出
塚原監督とリリー・フランキーさんは、現場で「どこまで主人公に寄り添い、どこで一歩引くか」について何度も意見を交わしていたそうです。
主観的なアドバイスを押し付けるのではなく、「本当に大切な場面ほど、そっと静かに見守るスタンスでいこう」と2人でしっかり合意したそう。
たとえば主人公が悩むシーンでも、天馬市郎は決して圧をかけず、ごくさりげない仕草だけで支えようとする——そんな演出が実際に生まれています。
現場では、台本にない自然なリアクションをプラスしたり、細かなアレンジを監督と一緒に相談しながら盛り上げていった、というエピソードも残っています。
リリー・フランキーさん自身も「現場では周りのキャストや空気になじむこと、主演の松たか子さんや松村北斗さんのリズムにそっと寄り添うように演じました」と語っています。
演技プランをガチガチに決めるのではなく、共演者との距離感やその場の空気をいちばん大切に、本人そのままの柔らかさで芝居をしていたそうです。
リリー・フランキーさんが明かす撮影秘話も、そんな現場の“あたたかさ”や“自然なやりとり”を物語っています。
リリー・フランキー本人が語る撮影秘話
坂元作品初参加への緊張と挑戦
今回の『ファーストキス』は、リリー・フランキーさんにとって坂元裕二作品初参加。
インタビューでも「坂元さんの世界観や会話劇に入るのは正直すごく緊張したけれど、チャレンジできて楽しかった」と語っています。
印象的だったのは、リリーさんが「大事なのは言葉そのものじゃなくて、雰囲気とか間合いでどこまで受け止められるかを意識していた」と話していたこと。
セリフの量や派手なアクションには頼らず、何気ない一言であったり、ただ“そこに静かにいる”ということ自体の大切さを大事にしていたそうです。
いわゆる押し付けや説得じゃなく、そっと寄り添う大人の佇まいを目指していた、というのがまた素敵ですよね。
さらに、台本通りに動くだけじゃなく、その場のリアルな空気感や共演者との距離で「間」を決めていく、というのもリリーさんならでは。
たとえば、セリフが少ないシーンほど、ポケットに手を入れたり、窓の外をぼんやり眺めたり…と、ごく自然な仕草を自分で加えて“らしさ”を出していたんだそうです。
そういう細かなこだわりが、天馬市郎というキャラクターの空気感や存在感につながっていたんだな、と感じました。
現場で生まれた”リリーマジック”
撮影現場では、リリーさんが天馬教授そのままの柔らかい雰囲気で、キャストやスタッフみんなに安心感と穏やかさを広げていたそう。
これが「リリーマジック」と呼ばれていた、という素敵なエピソードもあるんです。
松たか子さんや松村北斗さんも「リリーさんが現場にいるだけで場がほっと和む」「まさに天馬市郎そのものだった」と絶賛。
特に松村北斗さんとは、劇中だけでなくオフの時間にも仲を深めたそうで、その自然体な関係がそのまま映像に映し出されていたといいます。
吉岡里帆さんのインタビューにも、「リリーさんが主演の2人を優しく包み込んでいた」とあり、リリーさん自身が現場のムードメーカーになっていたようです。
休憩中や本番以外でも肩の力を抜いたやり取りを率先していたおかげで、キャスト同士のリアルな関係性がそのまま作品の雰囲気に反映されていたんだな、と感じました。
まとめ:なぜリリー・フランキーだったのか
映画『ファーストキス』でリリー・フランキーさんが天馬市郎役に抜擢された背景には、坂元裕二さんの脚本と塚原あゆ子監督の演出が求める「静かな包容力」や「自然体の温かさ」を一番体現できる俳優だったからこそのキャスティングがありました。
脚本を書いている段階から、天馬市郎といえばリリーさんしかいない、というイメージが常にあったそうです。
現場では、細かくあれこれ演技を指示するのではなく、「何もしないで、そのまま自然体でいてください」とリリーさんに任せるスタイルだったそう。
だからこそ、その場の空気感や“余白”が大事にされて、じんわりと温かい理想の大人像が生まれていった気がします。
見守るような優しさや、押し付けじゃない包容力が、ふとした瞬間にちゃんと伝わってくる――そんな新鮮なアプローチが、とても心地よく感じられました。
坂元さん、塚原監督、そしてリリーさん本人も「余計なことは言わずに静かに見守る」「ただそばにいるだけでよい」という姿勢を大切にしていたからこそ、作品全体に驚くほどの温かさと深みが生まれたのだと思います。
初めての坂元作品・初めての塚原組という新鮮な組み合わせだったからこそ、逆に自由でしなやかな役作りができて、観る人の心に残る名演技につながったのでしょう。
ぜひリリー・フランキーさんが体現する天馬市郎の“静かな存在感”がどんなふうに物語を支え、観客の心にそっと残るのか、その目でじっくり味わってみてください。