映画『ファーストキス』で再び共演する吉岡里帆さんと松村北斗さん。
過去と現在を行き来するタイムトラベルの中で、恋心と家族愛が交差する物語を、二人ならではの息の合ったやり取りと共に深掘りします。
映画ファーストキスのあらすじと主要キャスト
物語の核心となるテーマ
映画「ファーストキス」は、主人公カンナ(松たか子)が夫の駈(松村北斗)を事故で失った後、タイムトラベルで過去に戻り、15年前の自分と夫に再会する物語です。
坂元裕二さんの脚本によって、恋心から始まった二人の関係が、時を経て家族愛へと変化していく様子が丁寧に描かれています。
現在の冷え切った夫婦関係と過去の熱い恋心を対比させることで、愛の形が時とともに変化することの美しさや複雑さが浮かび上がってきます。
タイムトラベルという設定を通じて過去の自分と現在の自分、そして夫婦それぞれの成長が際立つ構造も印象的です。
吉岡里帆が演じる天馬里津の役どころ
吉岡里帆さんが演じる天馬里津は、大学教授の娘として登場し、父の研究室で働く駈に淡い恋心を抱いています。
里津は積極的に駈にアプローチする場面が多く、駈くんと親しみやすく呼びかけたり、パーティーなどで彼の注意を引こうとする姿が印象的です。
しかし、駈は研究に夢中で里津の気持ちにまったく気づいていません。
教授の娘という立場もあり、駈にとって里津は恋愛対象外にしていた可能性もあると思います。
この恋心のすれ違いが、物語に切ない余韻を与えることになりました。
吉岡里帆×松村北斗の2回目映画共演について
前作ホリック xxxHOLiCでの初共演
松村北斗さんと吉岡里帆さんは、2022年公開の映画「ホリック xxxHOLiC」で初めて共演しました。
蜷川実花監督によるファンタジー作品で、吉岡さんは妖艶な悪女・女郎蜘蛛役、松村さんは主人公の同級生・百目鬼役を演じています。
初共演時のインタビューでは、吉岡さんが松村さんについて「現場を柔らかくする空気を持っていて、苦しい役柄でも自然体で演じられた」とコメント。
一方、松村北斗さんも「吉岡さんの女郎蜘蛛の色気と迫力に圧倒された」と語っており、お互いの演技力を高く評価していました。
ファーストキスでの再共演の魅力
2度目の共演となった「ファーストキス」では、前作とは全く異なる世界観の中で新鮮な気持ちでお芝居ができたと両者がコメントしています。
吉岡里帆さんは「大好きなキャストと脚本家、監督に囲まれた現場は忘れられない分岐点」と語り出演できたことへの喜びをコメント。
松村北斗さんも「他作品とは違う関係性なので、空気感が変わるのが楽しかった」と座談会で語っており、役柄を何度も探り直した様子が印象的でした。
2回目の共演だからこそ生まれる安心感と、新たな役柄による化学反応が作品に深みを与えています。
2度目の共演・演技の化学反応
・里津(吉岡里帆)が駈(松村北斗)に呼びかける際の、戸惑いを含んだ微笑み
・パーティー会場で駈の注意を引こうとした時に、目線を落とし指先をいじる自然な仕草
・前作『ホリック xxxHOLiC』では非現実的な役柄だった二人が、今作では日常的な感情や沈黙・間合いのリアルさを丁寧に重ねている
・2回目共演だからこそ、お互いの芝居を感じ取るような “間” や “仕草” が増え、安心感と新鮮さが共存
こうした細やかな演技が、人物の感情や関係性をよりリアルに、伝わる形になっているのだと思います。
里津の恋心が最も強く表現される場面
吉岡里帆さん演じる里津の恋心は、研究室で駈くんと呼びかける場面や、パーティーなどの私生活で駈に注目する仕草で特に強く表現されています。
無邪気で積極的なアプローチは、相手への好意と憧れがストレートに表れた演技として観客の印象に残ります。
また、主人公カンナが過去に戻って駈と教授の娘が結婚すれば幸せではないかと一度画策するエピソードでは、里津の気持ちがより浮き彫りになります。
この時、カンナが二人の恋心に思いを馳せることで、里津の純粋な想いが観客にも伝わりやすくなっています。
報われない恋の切なさと成長
駈が里津の気持ちに気づいていない描写は、報われそうで報われない恋心を一層切なく強調しています。
カンナから彼をおとすコツとして「私とパン屋を始めませんか」と教わる場面もありますが、里津はそのアドバイスを素直に受け入れません。
この選択は、里津が自分の価値観や気持ちを大切にしていることを表しています。
「パン屋はやりたくない」と即答する場面は、恋のために自分を偽らない彼女の誠実さを表現した重要なシーンといえるでしょう。
出典:映画公式サイト・脚本
心理変化のクライマックス
物語終盤で里津の心理変化が最も顕著に表れるのは、駈が事故で亡くなったことを知り、カンナに「私と結婚していればこんなことにならなかったかもしれない」と涙ながらに打ち明ける場面です。
出典:映画公式サイト・脚本
この瞬間、里津の恋心が期待から喪失と諦めへと転換する様子が鮮烈に描かれています。
彼女が初めて自分の気持ちを真正面から受け止め、叶わなかった想いを涙で語る姿は観る人の心にも悲しみ・喪失感が深く伝わってきました。
彼女の報われない恋心と受容への心理変化が凝縮された、心に残るクライマックスシーンです。
家族愛と夫婦の絆の深掘り
カンナと駈の15年の変化
物語の軸となるカンナと駈の夫婦関係は、恋心から始まった愛が家族愛へと変化していく過程を丁寧に描いています。
結婚当初は愛情が強かったものの、年月とともに倦怠期や価値観のズレが生じ、冷え切った日常を抱えていました。
結婚15年目、駈が事故で亡くなり、カンナは喪失感と後悔を抱いています。
しかし、タイムトラベルで過去の駈に再会することで、やっぱり自分はこの人が好きと愛の本質に気づくのです。
もしあなたがカンナだったら、どんな選択をするでしょう?
タイムトラベルにより、観客も夫婦愛の深さと複雑さを実感できるようになっています。
恋愛と家族愛の違い
作品では、恋心を理想や憧れとして、家族愛を現実や絆として描き分けています。
里津の恋は美化された憧れの形で心に残り続けますが、カンナと駈の夫婦愛は日常の積み重ねと現実の中で育まれたものです。
この対比により、恋愛は美化されがちであり、家族愛は日常の積み重ねの中にあるという人生の真実が浮き彫りに。
どちらも人生にとってかけがえのない愛の形であることを、作品は静かに問いかけています。
松村北斗の演技と坂元裕二脚本への思い
役作りへの真摯な姿勢
松村北斗さんは坂元裕二さんの作品や書籍が大好きで、「どれほど影響を受けてきたかわからない」とコメントしており、この作品に参加できたことをとても誇りに思っていると語っています。
脚本を初めて読んだ時、「自分がこの役を演じると思うとページをめくる手が止まった」という感動的なエピソードも明かしました。
撮影現場では監督や共演者にたくさん相談しながら役作りを行い、台本の深読みやセリフの意味も現場で徹底的に話し合ったそうです。
特に印象的だったのは、映画の回想シーンで描かれるプロポーズの場面でした。
コタツの上に3Dの四目並べゲームとともに柿ピーが置かれ、カンナは柿ピーの柿を、駈はピーナッツを好むという設定になっています。
この時に駈が口にするセリフが「君は柿ピーの柿が好きで、僕はピーナッツが好き」という告白の言葉です。
出典:映画公式サイト・脚本
松村さんはこのセリフについて、「坂元さんならではの言葉選びが好きで自分が言えて感動的だった」とコメントしており、坂元脚本を愛してやまない部分を体現できた瞬間として語っています。
坂元裕二さんらしく、身近なものを物語に巧みに取り入れて人物像を浮かび上がらせていました。
硯家のキッチンでは、冷蔵庫の横にさりげなく柿ピーが置かれているなど、細部まで遊び心のある演出が見られます。
また、このプロポーズシーンは松村さんのクランクインともなった重要な場面で、撮影現場でも松たか子さんと塚原監督の3人が柿ピーについて語り合うなど、作品を象徴するエピソードです。
共演者との関係性
松たか子さんとの初共演について、松村北斗さんは「大変キュートな方で、年齢や芸歴に関係なくフラットに接してくれて安心感があった」と語っています。
撮影を重ねるごとに気持ちがほぐれて、シーンにも入りやすくなったということで、現場の良好な雰囲気が伝わってきますね。
過去と現在の交錯が生む物語の深み
タイムトラベルの意味
この作品のタイムトラベルは、ただのSFじゃなく、人の気持ちに寄り添うための大事な仕掛けなんです。
過去と現在を行き来することで、「恋ってこうやって家族の愛に変わっていくのかも」と、いろいろ考えさせられました。
カンナが過去に戻って駈と里津を結ばせようと画策する場面では、もし違う選択をしていたらという気持ちが描かれています。
しかし、結果的にはそれぞれの人生において、恋心は恋心として、家族愛は家族愛として存在することを浮き彫りにしているんです。
選択と受容の物語
里津が駈への恋を諦めて受け入れる過程と、カンナが夫との真の愛を再発見する過程は、どちらも人生における選択と受容を描いた深いテーマです。
成就しなかった恋だからこそ美化され心に残る里津の物語と、すれ違いや喪失を経て本当の愛とは何かに気づくカンナの夫婦愛が対比的に描かれています。
これにより、観客は恋愛と結婚、理想と現実について自分なりの答えを見つけることができるようになっているんだと思いました。
それぞれの愛の形が人生にとってかけがえのない存在であることを、「ファーストキス」は静かに伝えています。
SNSでの反応と評価
ファンからの熱い支持
映画「ファーストキス」に対するSNSでの反応は非常に好意的です。
特に吉岡里帆さんと松村北斗さんの2回目の共演に注目が集まっています。
「坂元裕二脚本で新たな松村北斗が見られた」という声や、「吉岡里帆との再共演で演技に厚みが増した」といったコメントがたくさんありました。
また、「泣ける」や「一度きりじゃなく何度も見たい」という声もたくさんあり、2回目の共演らしい安心感や、新しい組み合わせから生まれた息の合ったやり取りに共感する人が続出。
中でも、「恋心と家族愛の描き分けがリアルで胸に響いた」という声が印象に残りました。
業界関係者からの評価
2回目の共演だからこそ生まれる安心感と新鮮さが、好評です。
業界内からも松村北斗さんの自然体な演技力、吉岡里帆さんとの相乗効果の高さが評価されています。
まとめ:恋心と家族愛が織りなす人間ドラマの魅力
映画「ファーストキス」は、吉岡里帆さんと松村北斗さんの初共演では見られなかった、作品への溶け込み方や掛け合いの深みと、坂元裕二さんの脚本の魅力が存分に発揮された作品です。
恋心と家族愛という異なる愛の形を通じて、人生における選択と受容の意味を深く考察させてくれます。
里津の報われない恋心とカンナの夫婦愛の再発見という対照的な物語。
過去と現在を行き来するなかで物語は複雑に絡み合い、見ている私たちの心にいろんな感情や気づきを残してくれます。
叶わない恋も尊く、現実の先にこそ本当の愛がある――三人の想いが重なって、見終わったあとも心にじんわり余韻が残りました。
「もう一度考え直したくなる…」と思わせてくれる作品です。
この作品は、恋と家族、理想と現実というテーマを通じて、それぞれの愛の形が人生にとってかけがえのない存在であることを静かに伝える、心に残る名作といえるでしょう。
時とともに移ろう愛を描いた本作は、見る者それぞれに「人生における選択」「受容」「愛の本質」について静かに問いかけてくれます。
“報われない恋”も“成熟した家族愛”も、人生の大切な一片――その余韻が、私たちの心に長く残る映画となっています。